抜染、着色抜染(DISCHARGE)

抜染、着色抜染(DISCHARGE)

抜染とは文字通り色を抜いて染めることを意味します。生地の風合いを損ねることなく、ソフトでナチュラルなプリントが行える、理想的なプリントに思えますがですが実際に抜染や着色抜染プリントを行うことは非常にまれで、それどころかさらに減少の傾向にさえあります。これは一体なぜなんでしょうか?抜染は実現希望しても行えない加工なんでしょうか?

抜染と着色抜染の違い

Tシャツプリントに詳しい方やアパレル関係の方は抜染という言葉を一度ならずとも聞いたことがあると思います。元来はプリントではなく染色の方法ですが現在では抜染という染色方法にヒントを得て、染料の代わりに顔料を使用するプリンティングメソッドを指します。抜染は白抜(はくばつ)と着抜(ちゃくばつ)に分類が可能です。白抜はシルクの版を用いて、脱色剤をインクとして使用し、単純に生地の色を抜きます。これに対して着抜は脱色と同時、もしくは次のプロセスで着色まで行うことを言います。

次亜塩素酸ソーダと酸化還元剤

多くの方は洗濯の際にブリーチやハイターといった漂白剤を使用して、意図せず生地の色を抜いてしまったことがあると思います。ブリーチやハイターの実体は次亜塩素酸ソーダというケミカルです。次亜塩素酸ソーダは名前が長いので通常次亜と呼ばれています。皆さんになじみ深いのはプールの匂いです。プールの殺菌に使用されているのが次亜塩素酸ソーダです。さらに昨今のコロナパンデミックの最中で消毒に次亜塩素酸ソーダが使用できるという記事を読んだ人も相当数いると思います。実際に可能です。次亜塩素酸ソーダは意外と身近なケミカルだということになります。次亜塩素酸ソーダ自体に有害性はありませんが、酸と混合すると塩素を発生するため、取扱にはご注意が必要です。

洗濯時点で次亜塩素酸ソーダの使用を間違うと生地の色が抜けてしまいます。これはうまく使用すると生地の色を意図的に脱色することができるということになります。これは実際に可能ですが次亜塩素酸ソーダやそれを含有するブリーチやハイターは液体です。様々な材料をプリントできるシルクプリントですがさすがに液体状態の物質はプリントできません。実際には液体を増粘しインク状態にして使用します。次亜塩素酸ソーダの脱色の能力は高いので、反応染が施された一般的な衣料品であればほとんどが抜染プリントが可能ですが、プリント後そのまま放置しておくと残留する次亜塩素酸ソーダは生地を脆化させ、経時で生地が破れてしまうという現象が起こります。これをふさぐためにプリント後水洗を十分行い残留する次亜塩素酸ソーダを除去することが必須となります。

皆さんに比較的なじみがあるであろうということで次亜塩素酸ソーダを用いた抜染を説明してきましたが、実際に反応で染められた衣料品に次亜で抜染や着抜を行うことはほぼありません。できないわけではありませんが抜け色が白とは程遠い事と、生地の脆化の懸念が理由です。次亜を用いた抜染、着抜は主にインディゴで染められた商品に用います。インディゴ時の抜染にはマンガンか次亜という選択肢が過去にはありましたが、マンガンは環境汚染の問題で現在使用ができなくなっています。

では本流の反応染の抜染には何を使用するのかというと、ハイドロサルファイト(酸化還剤)というものを使用します。反応染がどのような処方で行われているか等に依存はしますが抜け色が次亜に比べると白に近くまた生地の脆化の心配が少ないことが理由です。酸化還元剤は英語ではハイドロサルファイト呼ばれ、皆さんになじみのある商品としては市販のハイドロハイターが比較的近いものです。 

なぜ抜染はトラブルが多く、失敗する事が多いのか

上で説明したハイドロサルファイトで反応染の生地を脱色する場合、使用されている染料の個性によって抜け方が変わってきます。良く抜ける染料と、中には全く抜けない染料さえあります。染色工場や工程では抜染を前提にして染色を行っているわけでありません。これは当然のことで発注元から要望されることは指定色に合わせることと洗濯を中心とする堅牢性です。例えば黒に染まった生地が2反あるとします。見た目には2反とも区別ができない程同じクオリティーに仕上がっています。ところがそのうち1反は一度ブルーに染めて失敗した生地をブルーの上から黒に再染色したものだとします。染色工場としてはルールに反することを行っているわけではありません。仕上がった2反は誰が見ても区別ができない問題の全くないクオリティーに仕上がっているからです。

弊社でこれに抜染を行ったとします。弊社はこの2反の染色の実際が異なることを情報として取得することができません。染色工場に発注したメーカーでさえ情報は届いていません。なぜなら染色工場は全く問題のない染色を行っているからです。ところがこの2反に抜染を施すとなると2反は染められている内容が異なります。1反は単純に黒に染まっていますがもう一反は黒の下にブルーの染色が施されています。抜染を行った場合どういう色に抜けるかは染料に依存し一様ではありません。今説明しているケースでも黒はよく抜けてナチュラルに近い色になるとします。片やブル―染色が前段階で施されたこのブルーが非常に抜けにくい染料であったと仮定します。結果は1反はうまく抜けてナチュラルになり、もう一反はわけもわからず抜け色がブルーになるという結果になります。

抜染をうまくハンドルする方法

抜染はすでに述べたように非常に魅力的な加工方法です。トラブルが多く敬遠されていることは事実ですが、それをもって抜染の可能性を弊社は否定するものではありません。抜染のトラブルの原因は染色段階にあるので、ここを可視化すれば目指す理想的な抜染も可能となります。既製品のTシャツを使用するのではなく、染色に対応した品番を使用し弊社ハンドリングで抜染を前提とした染色を施せば抜染のトラブルを回避することが可能です。弊社自体に染色の設備はありませんが長年付き合いのあるスキルの高い染色の協力工場が何社かあります。そういった染色工場とのタイアップで初めて抜染、着抜が可能になります。

抜染の逆メソッド防染

抜染はすでに染色が終わった商品の色を抜く、もしくは抜いたうえでさらに色をプリントするという手法です。認知度は低いですが、これの正反対の防染というメソッドが存在します。白無地のTシャツにプリントを行い、その後これに染色を施す。プリントした部分に染色カラーは色被りしない、という手法です。反応染料ついては抜染との区別が際立つわけでもなくあまり重要な加工ではありませんが、顔料染については重要な意味を持ちます。なぜなら顔料染の抜染はできないからです。顔料染に抜染に近い加工方法は唯一顔料防染となります。現時点で顔料防染のコレクションがありませんのでヴィジュアルで確認していただくことができませんが、作成してご覧いただきたいと思っています。

抜染インクジェット

インクジェットを用いた抜染、着色フルカラーインクジェットプリントのサービスはご好評をいただいてはいましたがインクメーカーからのサプライがなくなりまことに残念ではありますが2020年5月末日をもって終了せていただきました。

抜染を使用した加工実績